かつお節ができるまで:古代の「堅魚」から本枯節へ

かつお節は、カツオを煮て、燻して、カビを付けて乾かすという手間をかけて作られる保存食です。古代の「堅魚」から江戸時代の燻製法やカビ付け、現代の削り節パックまでの変化をたどります。

並べられたかつお節
写真:matsuyuki(CC BY-SA 2.0)/Flickr
目次
  1. 古代の「堅魚」
  2. 燻して乾かす「焙乾」の工夫
  3. カビが生む「本枯節」
  4. かつお節の主な製造工程
  5. 削り節パックの登場
  6. まとめ

削りたての香りが立ちのぼるかつお節は、昆布と並ぶだしの主役です。完成したかつお節は木材のように硬く、たたくと高い音がします。この独特の保存食は、長い時間をかけて工夫が積み重ねられた結果、生まれたものでした。

古代の「堅魚」

カツオを干して保存する方法は、古代から行われていました。奈良時代の法律である大宝律令や養老令には、税として納める品目に「堅魚(かたうお)」「煮堅魚(にかたうお)」「堅魚煎汁(かたうおいろり)」などが見られます。

「堅魚」はカツオを干して固くしたもの、「煮堅魚」は煮てから干したもの、「堅魚煎汁」はカツオを煮た汁を煮詰めた調味料と考えられています。「カツオ」という名前自体が「かたうお(堅い魚)」に由来するという説もあります。

燻して乾かす「焙乾」の工夫

天日で干すだけでは中まで十分に乾かず、長く保存することはできません。江戸時代前期の17世紀後半、紀州(現在の和歌山県)の漁師が、煮たカツオを煙で燻しながら乾燥させる「焙乾(ばいかん)」の方法を土佐(現在の高知県)で広めたと伝えられています。

燻すことで水分が抜けやすくなるうえ、煙の成分によって傷みにくくなり、香りも増しました。この方法は土佐で改良され、やがて各地の産地へ伝えられていきました。

カビが生む「本枯節」

さらに江戸時代には、燻して乾かしたかつお節に、あえてカビを付けて熟成させる方法が生まれます。カビ付けと天日干しを何度も繰り返すことで、かつお節の中に残った水分がさらに抜け、脂肪が分解されて、雑味の少ない上品な香りとうま味が生まれます。

かつお節は、製法によっておおまかに次のように分けられます。

名称製法特徴
荒節(あらぶし)煮熟・焙乾まで燻した香りが強く、削り節の原料として広く使われる
枯節(かれぶし)荒節の表面を削り、カビ付けを行う香りがまろやかになる
本枯節(ほんかれぶし)カビ付けと天日干しを何度も繰り返す長い時間をかけて熟成させた最上級品

かつお節の主な製造工程

伝統的な製法では、おおよそ次のような工程で作られます。

  1. 生切り:カツオを三枚におろし、さらに背と腹に切り分ける
  2. 煮熟(しゃじゅく):かごに並べて熱湯で煮る
  3. 骨抜き:身を崩さないよう、骨を一本ずつ抜く
  4. 焙乾:薪の煙で燻しながら乾かす。何日にもわたって繰り返す
  5. 削り:表面のタールや脂を削り落として形をととのえる
  6. カビ付け・日乾:カビを付けては天日に干す作業を繰り返す

本枯節が完成するまでには、数か月から半年ほどかかるといわれます。

削り節パックの登場

かつては各家庭で、かつお節削り器を使って必要な分だけ削るのが当たり前でした。1969年、東京・日本橋のかつお節店「にんべん」が、削ったかつお節を小袋に詰め、窒素を充填して風味を保つ「フレッシュパック」を発売します。これにより、削りたてに近い風味を手軽に楽しめるようになり、削り節は家庭の常備品として定着しました。

現在、かつお節の主な産地は、鹿児島県の枕崎市や指宿市(山川)、静岡県の焼津市などです。かつお節のうま味成分イノシン酸と、昆布のグルタミン酸の関係については「昆布と「うま味」の発見」で紹介しています。

まとめ

  • 古代から、カツオを干した「堅魚」や「煮堅魚」が税として納められていた
  • 江戸時代、煙で燻して乾かす焙乾法が広まり、保存性と香りが高まった
  • カビ付けによる熟成で、上品な香りの本枯節が生まれた
  • 1969年の削り節パックの登場で、かつお節はより身近な食材になった

煮る、燻す、カビを付ける、干す。何か月もの手間を惜しまずに作られるかつお節は、日本の保存と発酵の技術が凝縮された食品といえるでしょう。

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